2015年に入り、日本へ多くの外国人がこれまでにない規模で訪れています。その中でも今年の漢字の「安」や「爆」にも選ばれている通り特に中国人観光客が日本中を大きく賑わす騒ぎとなりました。
その理由としては円安となり日本への旅行について割安感が出てきたことや、日本への観光ビザが必要なくなったこと、そして消費税の免税対象を拡大した施策などがあげられます。特に円安に関しては中国元とのレートにて円が下落し、これまでの約2/3の費用で日本旅行が楽しめる状態になっています。
実際外国人観光客の7割近くが中国や台湾などの東アジアからばかりですが、これにより「2020年までに2000万人」という国の訪日外国人の誘客目標が早々に達成されそうな見込みも立ち、3000万人へ上方修正をするなどインバウンドビジネスの盛り上がりが期待されます。 実際、京都、東京、大阪といった本土の都市に関してはホテルがほとんど予約できない状況が続いていますよね。(シルバーウィークに大阪に行ったのですがホテルがどこもとれず大変でした..)
そして沖縄でも、上記要因にあわせて台湾や上海からクルーズ船が就航し、飛行機の便数も増えるなど年々爆発的に中国、台湾、韓国、香港からの観光客が増えてきています。また日本人に目を向けても円安に伴い、割高感のある海外旅行から国内旅行へ需要がシフトしてきているという理由もあり、国内旅行者の数も爆増し2015年4月〜11月までの8ヶ月間の累計観光客数が早くも前年度の716万人を上回る結果となりました。
実際、沖縄ではまだまだ本土からの観光客が圧倒的に多くの外国人観光客の10倍の規模となっています。東京、京都、大阪への訪日外国人数と比べると、まだまだ大きな伸びしろがあると言えるでしょう。移住者も増え、これからユニバーサル・スタジオ・ジャパンが作られる予定もあるなど、さらに多くの観光客を迎え入れる下地が整いつつある沖縄。基地関連問題における国の補助から一刻も早く自立し、独自で経済を発展させていくためにもこの分野に注力していく必要があるのは明白です。しかし、順調に見える沖縄にもまだまだ観光課題は多くあります。今回は内閣府沖縄総合事務局がまとめている「沖縄観光の現状と課題」というレポートから3つの課題をご紹介したいと思います。
課題1:短い滞在日数
観光産業を発展させるとは多くの観光客を呼ぶこととイコールではありません、それでは何かというと「観光収入」を増やすことが観光産業を盛り上げることに繋がります。いくら多くのお客様に足を運んでもらってもお金を使ってもらわなければその場所が潤うことはありません。言い方は悪いかもしれませんが、お客様に「どれだけお金を使ってもらうか」が観光産業における重要な論点なのです。
そこで重要な指標が滞在日数です。沖縄の平均滞在日数は3.8日前後となっており、この数字は観光先進地であるハワイと比較した場合、半分以下の水準にとどまっている現状で非常に少ない滞在日数と言えます。
それに伴い旅行者一人当たりの平均消費額もハワイの178,050円に対し、沖縄73,238円と決して多いとは言えない数字となっています。(平成21年からずっと6万円台でしたが、中国人の爆買いの影響で多少増えたと思われます。)
この1人当たりの消費額と観光客数の掛け算によって算出される観光収入ですが、消費額に大きな課題があるのは明白で長年「豊作貧乏」とも言われています。消費額を上げるには滞在日数を1日でも増やすことが重要で、(宿泊代が消費額の多くを占めているというのもあります)そのためには食、文化、芸能、歴史など沖縄ならではの魅力を老若男女を問わず好みに合わせて、いつでも誰でも楽しめるコンテンツが必要となります。(ちなみに沖縄に訪れる観光客の平均滞在日数が1日伸びると183万人の観光客が増加したのと同じくらいのインパクトがあるといいます。※平成23年度のデータより)
例えば八重山諸島や慶良間諸島などの離島の魅力を今以上に打ち出し、沖縄に行った際は離島にも足を運ぶのが当たり前というようなトレンドを作り出すなど、県内だけでなく離島をも周遊させる仕組みを作ることが大切です。他にも富裕層向けのVIPサービスをより拡充させていくのも消費額を増やすのに有効でしょう、他の観光地では絶対に真似ができない沖縄ならではの素晴らしい体験を提供できるかどうかが今後の発展のための論点になると思います。
課題2:外国人観光客への対応
調査によると外国語対応能力、WiFi、両替の利便性の面において外国人観光客からの満足度がかなり低い割合となっているそうです。
国内旅行者に比べて、外国人観光客はまだまだ一部ですが今後これらの改善も急務といえるでしょう。特に英語や中国語ができるスタッフの確保、教育なども世界の観光地とくらべて大きく遅れをとっていると言わざる得ません。
東アジアから訪れる外国人観光客の多くが「ショッピング」を主要目的としているにもかかわらず外国語の情報不足や両替ができないという理由で不満を残してしまうのは大変な機会損失です。そのような課題と需要を見越して国際通りに新しくできたドン・キホーテの戦略はさすがとしかいいようがありません.. 2022年までには県内の大手スーパー、サンエーが沖縄最大級商業施設を展開するとのことですし、2015年4月にできたばかりの商業施設ライカムにおいてもこれからどのように外国人を誘客していくのか楽しみです。
また、交通期間、道路状況、案内標識のわかりやすさに置いても満足度が低い傾向にあり、これからUSJなどの大きなエンターテイメント施設ができた時、渋滞などのさらなる問題が発生するのは明白で今のうちから対処していくアイデアが求められます。
課題3:多様化した観光スタイルへの適応
インターネットはもちろん、スマホやソーシャルメディア、そしてLCCの普及もあり、年々団体旅行は減少し、代理店やツアーパッケージを使わず自分で旅券や宿泊施設を手配する個人旅行がとても増えてきています。それに伴い様々な旅行者ニーズが生まれており、あらゆる観光客に適したコンテンツとそしてそれを適切に伝える手段がより重要視されています。美ら海、首里城、斎場御嶽、ひめゆりの塔など、昔からある定番の観光スポットに頼らず、新しい観光客のニーズに応えることができる仕組みを作り出す必要があります。
例えば宿泊施設や観光施設のスタッフをはじめとした地元の人とのコミュニケーション、ダイビング、マリンレジャー、保養・休養などの活動を行った方はリピートに繋がりやすいという傾向があるとの調査結果もありますので、これらの体験を中心として多くの選択肢を観光客が簡単に選べることができるようにすべきでしょう。
個人的には民宿しかない離島(渡嘉敷島)での宿探しに大変な不便さを感じた経験があります。(ネットで予約ができず電話をしても繋がらないという..)だれも簡単に情報を得られる世の中だからこそ、その望んだ体験にアクセスしやすい仕組みを作るにはやはりITとはじめとした投資が必要不可欠だと感じます。
また、まだまだ圧倒的に数が少ない欧米人旅行者における情報発信においては沖縄の文化や歴史をより詳細に伝えていくことが効果的だといいます。(こちらの欧米旅行者をターゲットにした体験型動画コンテンツのキャンペーンはとても秀逸だと感じました。)また、繰り返しになりますがよりラグジュアリーな体験や付加価値の提供も必須でしょう、プーケットやバリ島など、東南アジアの定番リゾートに流れる欧米人に沖縄へ目を向けてもらうためにまだまだできることは多くあります。
まとめ
以上、沖縄観光の実情と今後の課題についてまとめてみました。
個人的には離島へもっと足を運んでもらう仕掛けと、離島における宿泊施設とナイトスポットの拡充が課題解決における取り組みの一つとして有効ではないかと感じます。離島は夜、本当に何もなくお金を使う場所がありません。静かな夜こそがここでしか味わえない一つの贅沢ではありますが、また来たい、もっと滞在したいと思ってもらうためにもいくつか選択肢を用意しておく必要があります。
もちろん島の景観や自然を保護する必要があるのでバランスは重要です。例えばトリップアドバイザーの世界一のベストビーチにも選べれているブラジルのフェルナンド・デ・ノローニャ島のように1日の入島数を制限するなり、入島料を徴収するなどユニークな方法を検討するのも面白いでしょう。まずは旅行者の中でも富裕層をターゲットにしたVIPプランからスタートした上で、一般の人にも手の届く価格での提供を始めるといいかもしれませんね。
嫌いな人はいないと言われるほど、多くのファンを持つ島、沖縄。基地問題や経済格差、教育、福祉関連など様々な問題をもつ特殊な島ですが、いつまでも国からの支援に頼らずに自立をし、県民一人一人の自信を大きく育てていくことが世界的な観光地になるための第一歩と言えるでしょう。