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ブラック・スワンという本で「講釈の誤り」という人間の習性について説明がされていました。どういうものかというと、人というのは何らかの出来事を見るにつけ、その現象が起こった理由や原因を説明したがる性質があるというものです。9.11、サブプライムローン問題、東日本大震災など誰も予想もしえなかった社会的な問題に対してそれは顕著にあらわれるものですが、そういった問題が起こると専門家のような人たちはあたかも「私はそうなると思っていた」と言わんばかりに説明しますよね。例えば「半沢直樹」がヒットした理由をあれこれ説明されているのが旬なトピックでもあり、わかりやすい例なのではないでしょうか。
参考:なぜ『半沢直樹』は『ミタ』を超えたのか? -連ドラ評論家・木村隆志がヒットの要因を徹底分析


「誰も驚くような出来事」が起こる前は誰もそんなこと言い当てませんが、(”誰もが驚くもの”ですので)後付けであれば誰でも理にかなった「それっぽい説明」は可能です。例えば他の有名な例で面白かったのが「ニューヨークで1990年代に若者による犯罪が激減した理由」について多くの専門家は”画期的な取り締まり戦略”、”懲役の増加”、”人口の高齢化”、”銃規制の強化”、”好景気”などといかにも納得できる理由を異口同音で述べているそうですが、この最も大きい理由が”中絶の合法化”だったという説が最近有力視されています。


どういうことかというと米国では望まれない子供はきちんと育てられず、10代後半から悪の道に入っていく傾向があるそうですが、ちょうど犯罪が激減した時期は中絶が合法化された時期に生まれる予定だった子たちが、もし生まれていたらちょうど犯罪に手を染めるティーンエイジャーになるタイミングとピッタリ重なっているというのです。どのメディアもどの犯罪減少専門家たちも誰一人として”中絶の合法化”が犯罪激減の理由と言い当てられる人は居ませんでした。全く関連のない部分同士で因果が繋がっているなんてバタフライ・エフェクトとでも言いましょうか、ほとんど偶然がなせる技ですよね。これの現象は決してここだけに当てはまるものではなく、世の中におけるあらゆる出来事に対してその原因というのは予想もつかない所から来ていると感じます。どこかで物事の因果関係を知ったかふうに語っている人がいればまずそれは疑ってかかるべきでしょう。


前置きが長くなりましたがこの話しはWEBサービスや経営にも全くあてはまると思います。例えば上場や売却などのエグジットという成功についてその理由は様々あると思うのですが、直接的な理由はすべからく「運がよかった」に尽きると思うのです。(エグジットだけではなく、事業のV字回復等にも言えます。)もちろん何もしないで「運」の女神に微笑まれることはありません。「運よく」大きなことを成し遂げるには「運」を掴むための行動が必要です。その「運」を掴む秘訣というのは残念ながらなく、私たちができることといえば「運を掴むためにできるだけ多く行動を起こすこと」だけではないかと、ここ最近ずっと考えています。当たり前ですが、未来のことなので明日の環境が一体どうなるかは誰にもわかりません。読めない未来でヒット、ないしはホームランという成功を掴むにはそれに繋がるネタを出し続けるしか無いのです。


絶対に成功するものなどないので、筋の悪い一つのものに執着し続けるよりも、「成功に繋がればラッキー!」くらいの感覚で玉を出し続け、その中から手応えのあるものを選び、今度はそれ自体が成長に繋がる施策を出し続けることが重要だと感じます。(もちろん理念やコンセプトなどの一貫性は持たせるべきだと思いますが。)その発想を前提にしているのが「リーンスタートアップ」という考え方でしょう。多くの失敗を高速で行っていきながら学びを得て、次の手をどんどん打っていくこのマネジメント手法こそ「運」を味方にするための方法だと改めて強く実感しています。”データ”というのも「運」を引き寄せる一つのツールという認識です。

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スタートアップではよく「チーム」が大事と言われますが、スピード感をもって玉を出し続けれるチームはやはり強いでしょう。スタートアップに限らずスポーツや将棋やゲームといった勝負事に関してもその決着の多くは運で決まるとも思いますが、数をこなすほど、失敗すればするほど成功確率は上がっていきますよね、(こうすれば失敗すると言ったものが直感として身につきますので、)そういった中で勝率を一定以上に上げれるのがプロであるとも定義付けできるでしょう。例えばエリック・シュミットやマリッサ・メイヤーなど企業にCEOとして召喚される人たちはで一定の勝率を持って企業をまたは事業を成功させているプロの経営者といえます。しかしそういった分野でもやはり「運」の力がまだ強く、Steve Jobs以前のAppleの例を見ればわかる通りいくらプロの経営者でも上手くいくとは限りません。


プロの経営者でも失敗するのですから、事業を大きくした経験のない始めての人ならなおさらです。WEBサービスを起ち上げる時、会社を経営する時、初めははみんなド素人なのです。そんな中で上手くいく秘訣なんてものはありません、あるとすれば「”ラッキー”を掴むためにどれだけもがいたかどうか」に尽きるでしょう。いくら優秀なチームでも誰も必要としないものを作れば失敗しますし、その逆もありえます。なので一つが失敗したからといって止めるのは本当に愚かなことで、結局運だと割りきって沢山の施策を行っていくべきだと思います。小さなサイクルを回しまくって何がうまくいくかという実験を繰り返すのです。そしてお金が無くなる前に運の先っちょを掴んで次の実験へ繋げていく資金を獲得していく、その流れを理解することがスタートアップには重要なのではないでしょうか。言い換えると”運を掴むために動けるチームこそ強い。”ということです。


どの時代にも増して外部環境などにも大きく左右される今の世の中、不確実性に溢れる未来を読み解くことができないと割り切っているストーリーを最後にご紹介します。超大物投資家のロン・コンウェイとユリ・ミルナーは、なんでもYCombinatorの全ての卒業生に無条件で15万ドル投資をしているのこと。次なるGoogleやFacebookに投資する最も有効な手段が「全てに投資する」という事実からも未来は予測できないということが理解頂けるでしょう。予測できない未来、よりよい運を掴むためにスピード感をもっていかに多くのアクションが打てるか、改めて気合いをいれていきたいと思います。

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